大人のための童話 第1話 · 塩パンひとつの返事
江陵行きの夜行列車に乗った、行き場をなくしたひと리의男と、最後にある匂いを記憶しておきたかったひとりの女。二人は冬の海へ向かっていました。
逃げるように旅立った夜、互いの終わりを見抜いた二人は、思いがけず少しずつ相手の時間をつなぎとめていきます。紙袋の中の塩パンひとつ、遠くに残されたパン屋の灯り、そして誰かを覚えていることが人をもう一度生かしうるのかをめぐる物語。
**『塩パンひとつの返事』**は、喪失と羞恥、遅れてやってきた優しさ、そして静かな救いについての大人の童話です。冬の海のように冷たく、焼きたてのパンのようにあたたかな一篇。